網膜静脈閉塞症
原因・病態
網膜静脈(『眼球の構造と機能』参照)の枝の1本が詰まって、血流が低下するために、網膜の一部に出血(眼底出血)が生じる病気です。
網膜中心静脈閉塞症と共通する点も多いですが、違う点もあります。完全に失明することはほぼありませんが、動脈硬化のひどい人は虚血性視神経症を合併し、そこから失明することもあります。網膜中心静脈閉塞症よりも発生率が高く、約4~5倍多いとされています。
自覚症状
急速な視野異常、変視症、視力低下が生じますが、全く無症状で気付かないうちに跡形になって、そこに発生した新生血管から硝子体出血を起こしてはじめて発見されることもあります。視野異常は典型的には(斜め)上半分か下半分に、薄暗く見えにくい範囲が出現します。残りの半分がほぼ問題なく見えているのが特徴です。ほとんどの人が、一部歪んで見える自覚症状を訴えますが、視力低下は黄斑のむくみの程度により、0.1程度から1.0以上と正常に近いものまで様々です。
原因
網膜静脈閉塞(RVO:retinal vein occlusion)は、最も一般的な網膜血管症の1つであり、30歳から89歳の人々の間で0.77%の世界的な有病率があり、これは2,806万人の罹患者に相当します。RVOの病因は、網膜静脈圧迫または血管壁の損傷に起因する網膜静脈内の血栓症および閉塞です。閉塞部位によって、RVOは中心性RVO(CRVO)または分枝RVO(BRVO)に分類できます。RVOは網膜循環を著しく損ない、毛細血管損傷を引き起こし、黄斑浮腫(ME)、新血管化、網膜または硝子体出血、最終的には重度の視力喪失などの合併症につながる可能性があります。RVOは、高血圧、高脂血症、糖尿病(DM)、アテローム性動脈硬化症などの状態がRVOの全身危険因子としてされているため、全身性血管異常の可能性があるとされています。これより、眼科治療と同時に、高血圧、高脂血症、動脈硬化といった基礎疾患の治療を行うことも重要です。
検査
病変の範囲、血管閉塞の程度を知るために眼底検査をします。視力に影響する黄斑のむくみの程度を評価するために、光干渉断層計(OCT)検査を行います。蛍光眼底造影検査を行い、網膜の循環状態を調べることで、病気のタイプ、状態など治療方針の決定に重要な情報を得ることができます。当院では造影剤を使わないで網膜の循環状態がわかる光干渉断層血管造影で診断が可能です。
治療
黄斑のむくみのために視力低下をきたしている場合は抗VEGF治療が行なわれることがほとんどです。視力がいい場合は、様子を観ることがあります。また、副腎皮質ホルモン(ステロイド)を眼球の外側に注射することもあります。
黄斑のむくみがなかなか引かない場合や、病変範囲が広い時に硝子体出血や牽引性網膜剥離を予防するために、レーザー治療(網膜光凝固術)を行うことがあります。また、硝子体出血や網膜剥離を生じた場合には硝子体手術を行うことがあります。